宝石サンゴの歴史

宝石サンゴが人間と関わりを持ったのは、紀元前2万年の旧石器時代までさかのぼるとされています。少なくとも5,000年前から地中海沿岸で装飾品や薬品等の目的で利用されてきたといわれています。

ドイツの旧石器時代、約25,000年前の遺跡から地中海の宝石サンゴ「Corallium rubrum」を加工した玉が出土したという記録があり、ギリシャ、ローマ時代にも壁画や花瓶の装飾としてサンゴ樹が描かれたり、宝飾品としても数多く利用されてきました。また、サンゴの赤い色はギリシャ神話では「ペルセウス」と「メデューサ」の戦いで、メデューサの血が海草に触れたとたん海草はサンゴに姿を変えたといわれ、キリスト教では十字架に架けられたイエス・キリストが流した血の色と考えられていました。

このような言い伝えから、サンゴは悪を包み込み、大地に豊かな実りを与えるとされ、結果的に魔除けとして扱われるようになります。

現在でもイタリアでは年末年始に赤い物を身に着けると、一年間無病息災、健康で居られるとして、地中海サンゴもしくは、赤サンゴが用いられます。フランス王室では、出産時に赤いサンゴのネックレスを身に着けることから、新たな生命誕生の象徴、安産祈願として利用されています。チベット地方でも魔除けとして「山サンゴ」、サンゴが化石化したものを仏具や装身具として利用しています。国は変わってもサンゴは魔除けとして扱われているのです。

日本にサンゴがもたらされたのは、仏教伝来と共に、地中海産の宝石サンゴがシルクロードを渡り、聖武天皇に献上されたと記されています。このことは不確実な言い伝えですが、正倉院の宝物の中に地中海サンゴが収められていることから、信憑性は高いと言われています。その 後江戸時代までに、宝石サンゴは輸入品として日本国内に出回り、地方の大名やその周囲の人々の手に渡るほど普及していったようです。

文化9年(1812年)に室戸の漁師が、漁労中に釣り針に偶然サンゴがかかり、これを領主に献上したことが文章に残っています。これが日本で初めての宝石サンゴ類捕獲の記録だといわれています。その後も度々土佐の漁師は宝石サンゴを偶然引き上げており、これが高値で取引されている「珊瑚」であることは周知の事実になっていたようです。

しかし、江戸時代中期から行われてきた「倹約令」に触れることを恐れたか、もしくは重税をかけられることを危惧したか、当時の土佐藩はこの珊瑚が幕府に知られることを恐れ、漁師達にはこれを水揚げすることを禁じたとさ れています。

明治維新が起こり、時代が変わると「サンゴ漁」は一気に解禁となり、明治4年(1871年)には室戸地方において、サンゴ採取 事業が開始されています。既に捕獲技術は色々と研究されていたようで、天保年間には効率よく珊瑚を採取できるように工夫された「サンゴ網」が考案されていました。

当時の漁獲高はすさまじく、高知、鹿児島、長崎での漁獲の合計が、1901年には16トン以上の水揚げが記録され、日本は珊瑚輸入国から一気に珊瑚輸出国となりました。

しかし、「サンゴ漁」が盛んになるにつれ、多くの遭難事故も起こりました。

高知では明治42年(1909年)には台風によって多くのサンゴ採取船が沈没し、足摺地方だけでも125名の死者が出たとの記録があります。長崎県の男女群島ではもっと詳細な記録があり、明治28年(1895年)に死者300人、明治38年(1905年)に死者10人、行方不明者 209人、沈船数155隻、翌明治39年(1906年)には死者119人、行方不明者615人、沈船数173隻、そして大正3年(1914年)には死者 64人、沈船数30隻という記録が残っています。

これだけの被害がありながらも、サンゴの漁場は徐々に広がり、伊豆諸島、小笠原諸島までに広がっていきます。大正13年(1924年)には沖縄県の許可船種にサンゴ漁業として10隻の登録があり、昭和12年(1937年)には沖縄本島知念沖で採取が行われた記録があります。

昭和34 年(1959年)に宮古島沖の宝山ゾネで「モモイロサンゴ」の大漁場が発見され、これが沖縄のサンゴ漁が注目を集めるきっかけになりました。昭和40年(1965 年)には福島県の建網漁船がミッドウェー諸島でサンゴを発見し、日本だけでなく台湾の船などもどっとミッドウェーに繰り出した、という歴史があります。

これらの漁は、全てサンゴ網を用いてのサンゴの採取でしたが、1979年、鹿児島県奄美諸島で、初めて潜水艇によるサンゴ漁が開始されました。それ以後、鹿児島県と沖縄県では潜水艇による漁獲のみが許可されています。その後、土佐沖で桃色サンゴと赤サンゴが発見され、その品質の良さから世界の注目を集めることとなり、現在では高知県の伝統産業として定着しています。

このように、日本のサンゴ採取漁業は明治以降急速に発展し、現在では「サンゴは日本」と言われるようになりました。

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